2019年5月13日 更新

【記事コラム】ネット経済のターニングポイント到来、モバイルネットの成長鈍化の突破口はどこにある? ーQuest Mobile「中国2019年春季報告」 

モバイルインターネットのビックデータ解析などを行う調査会社「Quest Mobile」が《中国2019年春季報告》を発表しました。中国のモバイルインターネットの今季の特徴や今後の成長が見込める市場などをご紹介します。

QuestMobile中国移动互联网2019春季大报告:大拐点已至,头部亿级稳定,中部最后厮杀,长尾进入尾声

飽和する市場、減速する成長、”BATT”の独占状態に

中国のモバイルネットのMAU(月間アクティブユーザー数)は11.38億人に到達した。モバイルネットの利用時間数も年々増加し、1日約6時間にまで増えた。しかしながら、ユーザー増加率は徐々に低下し、利用時間の増加幅も縮小傾向にある。モバイルネットへの依存度は年々高まるものの、その成長は鈍化している。
モバイルネット業界の伸びが減速する中、“BATT”と呼ばれる「百度(Baidu)」、「アリババ(Alibaba)」、「テンセント(Tencent)」、「頭条(Toutiao、バイトダンス・テクノロジーズ)」の4強がアプリ市場シェア70%を独占し、それに続く競合企業は残りの30%を奪い合っている状況だ。
1)2019年3月、モバイルネットMAU(月間アクティブユーザー数)は11.38億人に到達。しかし、2019年第一四半期のMAU増加数は762万人で、昨年の同時期と比較すると3月に初めて増加率が4%を下回る状況に。
中国のモバイルネットのMAU動向

中国のモバイルネットのMAU動向

2)2019年3月、モバイルネットの1人当たりの日平均利用時間数は6時間近くに。前年同月から37分増加したものの、増加幅は年々縮小。
モバイルネットの1人当たり日平均利用時間数

モバイルネットの1人当たり日平均利用時間数

3) “BATT”系のアプリ利用が全体の73%を占める。中でも「頭条(バイトダンス・テクノロジーズ)」系の割合は前年同期比3.1%増の11.3%に対し、トップのテンセント系は40%以上を占めるも、前年同期比3.7%減。
2018年~2019年 モバイルネット大手4社のアプリ...

2018年~2019年 モバイルネット大手4社のアプリ利用時間数比率

モバイルネットの二・三級都市での発展、高齢者への浸透が進む

中国の消費者物価指数(CPI)は上昇を続け、2019年第一四半期は前年比1.5%増のプラス成長を維持。特に農村部住民の可処分所得の成長率は、都市部住民を全面的に上回り、小都市や農村部のようなモバイルネットの普及が十分でない未普及地域では、生活水準が向上し、潜在的な消費力が増しているのは明らかだ。
また、高齢化が進み、2017年には50歳以上の高齢者は4.3億人、全人口の31%を占めるほどに。ネットユーザー全体における割合も、2018年12月時点で12.5%、前年同月より2.2%増加している。
1)2019年3月のユーザー増加数は、一級都市は686万人で前年比7.4%に対し、二・三級都市は1,000万人超で前年比4~5%増。利用時間数も二・三級都市が突出して増えている。二・三級都市を中心とした未普及地域はめざましい勢いでモバイルネット化している。
2019年3月 地域別モバイルネットユーザー数と利用時...

2019年3月 地域別モバイルネットユーザー数と利用時間数の増加(前年比)

2)「18歳以下」と「46歳以上」のユーザー群の増加率が他の年齢群に比べて高い。特に「46歳以上」の利用時間数は増加率28.8%という飛躍的な数値。高齢者にもモバイルネットが浸透してきたことが分かる。
2019年3月 年齢別モバイルネットユーザー数と利用時...

2019年3月 年齢別モバイルネットユーザー数と利用時間数の増加(前年比)

オンライン教育やショート動画は高成長、ミニプログラムの影響力も高まる

インターネット業界の経済成長は減速しているとはいえ、その成長率は他の業界より高く、GDP成長率を遥かに上回る。ここ6年は下降へ向かうも、2018年は20%を維持、GDPの6.6%と比較するとかなり高い。
業界全体としては減速しているものの、モバイルネットの細分化された一定の分野は、相変わらず高い成長率を見せている。オンライン教育、動画、総合ニュース、ショッピング、モバイルツール類などの分野は大きく伸び、ミニプログラムは影響が高まる一方だ。スマートデバイスのようなオフラインと結合した分野の成長も順調だ。
1)個人所得税改革により電子行政は大きく飛躍し、今期最も成長した分野となった。オンライン教育は「硬直的需要」(値段の影響を受けにくい需要)としてユーザーから支持され、実生活と密接に結合するスマートデバイスの分野も大きな成長が見られる。
2019年3月 規模別MAU増加率TOP5の業界比較(...

2019年3月 規模別MAU増加率TOP5の業界比較(前年比)

2)増加したモバイルネットの利用時間数の50%は、ショート動画や総合ニュースに費やされている。
2019年3月 モバイルネット利用時間増加TOP10の...

2019年3月 モバイルネット利用時間増加TOP10の業界比率(前年比)

3)1人当たり月平均10.2個のWeChatミニプログラムを利用。ユーザー数は急増しており、中でもゲーム系の増加率はトップクラスだ。アクティブ率(一定の期間にアプリやWebサービスを利用しているユーザーの割合)でも、ゲームがMAU100万超のWeChatミニプログラムの半数近くを占め、ほかにはショッピングやモバイルツール、動画の割合などが増加の傾向にある。
WeChatミニプログラムのカテゴリー比率(MAU10...

WeChatミニプログラムのカテゴリー比率(MAU100万超)/ WeChatミニプログラムの1人当たり月平均利用数(左下)/2019年Q1 WeChatミニプログラム数(MAU100万超)(右下)

4)業界を垂直にみると、モバイルネットの普及していない市場、オフラインと結合したO2O展開をする市場、コンテンツマーケティング、テクノロジーイノベーションの新商品などにおいて、ユーザー数は大きく増加している。
2019年3月 モバイルネットユーザー増加数TOP10...

2019年3月 モバイルネットユーザー増加数TOP10の業界比較(前年比)

さらなる成長への突破口はブルーオーシャンの開拓

モバイルネットが高成長を続ける分野の裏には、まだ飽和状態にない市場の具現化がある。言い換えれば、まだ飽和状態になっていないブルーオーシャンには、モバイルネットの成長へのチャンスが潜んでいる。
二・三級都市をはじめとする未普及地域では、生活水準が上がり、娯楽や消費へ費やす経済的・時間的余裕が増えている。また、高齢者と乳幼児の人口は年々増加し、50歳以上の高齢者は全人口の30%以上、0~4歳の乳幼児もここ3年急増して8,000万人を突破した。その増加幅は大きく、市場の伸び代が十分に感じられる。
1)伸びている業界のMAU増加数の半数以上は未普及地域のユーザー。未普及地域ユーザーのアクティブ率は、ショート動画が前年より20%高まり、Eコマースやモバイル決済も上昇している。
2019年3月 未普及地域のAU率TOP10の業界比較...

2019年3月 未普及地域のAU率TOP10の業界比較(前年比)

2)高齢者(50歳以上)はユーザー数も利用時間数も全体的に増加の一途をたどり、特に総合ニュースやショート動画の利用が大幅に増加。
2018年~2019年 高齢者のモバイルネット利用時間...

2018年~2019年 高齢者のモバイルネット利用時間TOP10の業界比較

3)乳幼児を持つ親が利用しているアプリの傾向は、ショッピングでは「モバイル淘宝」、トラベルサービスでは「携程(Ctrip)」に集中。他ユーザー群と異なるのは、妊娠・出産・育児関連アプリの利用で、最も集中しているのは、健康管理機能付きで美容、妊娠・出産など女性の為の情報SNSアプリ「美柚(Meet you)」。
2019年3月 乳幼児を持つ親のAU率TOP5のアプリ比較

2019年3月 乳幼児を持つ親のAU率TOP5のアプリ比較

新たな成長のチャンスはニューリテール、コンテンツマーケティング

オンラインからオフラインへの展開は、モバイルネットの新たな発展市場だ。ニューリテールの代表格、アリババの無人スーパー「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」は店舗数を拡大し、アプリのMAUは1,000万人を超えた。モバイルアプリを利用したO2Oモデルのニューリテールへ大手各社が参入し、軌道に乗り始めた。「天猫(T-mall)」や「小紅書(RED)」といったUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供するオフライン店舗も次々にオープン、オフラインからトラフィックを順調に獲得している。
ニューリテール系アプリのMAU数

ニューリテール系アプリのMAU数

コンテンツマーケティングの商業化も大きなチャンスだ。サプライチェーンが拡大し、コンテンツマーケティングのマネタイズの手法が多様化した。さらにMCN(マルチチャンネルネットワーク)の出現で商業化が後押しされ、広告とEコマースがマネタイズの主要な手段に。トップ企業はアプリのシェア争いから、アプリの商業化とマネタイズへ力を入れ始め、テンセントはここ半年で、動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili/哔哩哔哩)」やECサイト「有賛商城(Youzan)」などを始め、コンテンツマーケティング分野へ巨額の投資をしている。
2018年Q4~2019年Q1 ネット業界4強のコンテ...

2018年Q4~2019年Q1 ネット業界4強のコンテンツマーケティング分野への投資

また、アプリの有料会員制度にも注目したい。従来は年会費を払うとアプリの会員サービスを利用できる単一的なシステムだった。しかしアプリがエコシステム化し、一口の年会費で複数の異なるカテゴリーのアプリの会員サービスが利用可能なシステムが増えている。例えば、EC大手「京東(ジンドン)」の有料会員プログラム「京東PLUS」に申し込むと、Q&Aサイト「知乎(Zhihu)」や動画共有サイト「愛奇芸(iQIYI/アイチーイー)」の会員サービスも利用可能。こうして自社グループにユーザーを囲い込む戦略なのだ。
アプリのエコシステム化への動向

アプリのエコシステム化への動向

インターネット経済はターニングポイントを迎えた。急成長を遂げたモバイルネットは、さらなる発展の可能性のある空間を探さなければならない。それが既存市場のどこにあるかを明確に捉え、成長中の新しい市場へいかに切り込むかが重要になる。業界が細分化し、トラフィックをマネタイズする手法が多様化して、モバイルネットへたくさんのチャンスが現れた。それを掴み取ることに今後の生死がかかっているだろう。
-----------元記事の紹介はここまで--------------


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