【記事コラム】“直播”（ライブ販売）の裏側を暴露！元手ゼロで稼ぐ"グレーなニッチビジネス"「优X直播」と「全民抖商」の仕組みに迫る！

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「淘宝客」とは、ソーシャルメディアの影響力を利用して、売り手の販売サイトへフォロワー等の買い手を誘導するKOL（インフルエンサー）等のことで、自らは商品の販売やサイト運営は行わず、ブランドや販売店舗からのコミッションで収入を得ている。

もしも「淘宝客」の誕生をPVが公的権利から私的な権利へと移行する転換点であるとするなら、「直播（ライブ販売）」は動画や音声を用いたメディアとインタラクティブな交流手法で個人のPVにアプローチする最も勢いのあるマーケティング方法であると言える。

現在、「直播」によるライブ販売形式は各サイトがそれぞれの特徴を打ち出し、ショーレースの様相を呈しているが、依然幅広く大衆向けに発信するものから、ニッチなユーザーをターゲットとするものまで、多くのプラットフォームが隙間を狙う産業となっている。

ライブ販売で大きな売上が見込める今、「抖音（Tiktok）」や「快手」の仮想ライブ配信システムを自称する「优X直播」というツールでは、全自動・無人のライブ販売が実現可能だという。“寝てても稼げる”ライブ販売、そんな方法が果たしてあるのだろうか？

『亿邦动力』が「优X直播」のユーザーフェイスを試したところ、ユーザーは無料のアンドロイドシミュレーターをダウンロードし、root権限を取得するだけでよいという。また、「优X直播」をインストールした後、ショート動画アプリの「抖音（Tiktok）」や「快手」のライブ配信コンテンツを簡単に動画ファイルに変換することができた。

“寝てても稼げる”という「优X直播」について、疑問の声は後を絶たない。
ショート動画でライブ配信を代替したとしても、その他の細かな問題は依然存在している。ライブ配信はインタラクティブな交流形式を採っているが、そのようなコミュニケーションがとれないショート動画でライブを代替すれば、（売上への）“転化率”は間違いなく劣るであろう。

しかしながら、これらは全て売り手にとって想定内である。
ライブ中継を録画し販売動画にする以外に、「优X直播」はソフト面を修正しながら多くのアカウントで同時に配信することに余念がない。これらの“偽ライブ”動画は全国各地で再生され、“規模による効果”で高収入を獲得する。転化率が低い？そんなことは重要ではない。配信回数が多ければそれでよい、というのが「优X直播」側の考え方である。

動画コンテンツの所有者は、一度設定を行うだけで、偽のライブ動画を使った全国配信がすぐに実現可能で、商品を売り上げることで販売店からのコミッションフィーを獲得できる。

eコマースの実践者の観点から見ると、この「分散型」ライブストリーミングのアイデアは、本質的には淘宝客時代の淘客のWEBサイトや淘客グループの延長であるという。
ただし、このようなチャネルはソフトウェアのツール性に重点を置きすぎており、依然として高トラフィック時代の夢に没頭しており、本来のライブ配信自体の最も重要なマルチメディア性やインタラクティブ性を失っている。

「快手（Kuaishou）」運営従事者は『亿邦动力』の取材に対し、このようなツールの「快手」プラットフォームにおける“生存率”は高くないと明かし、その原因として「快手」との違いを次のように述べた。

「快手」のプラットフォームはとても強いコミュニティ属性を持っており、ユーザーの相互交流や信頼感に対するニーズが他のプラットフォームよりも高い。「快手」のライブ配信では、テキストによる基本的な相互交流以外に、ライバーPK（ライブ司会者同志のインセンティブを伴う対決）、２者間音声通話（连麦）、“紅包”や抽選による割引き、動画編集など様々なインタラクティブツールがある。ただコピー動画を投稿するだけでは、生き残ることは不可能だ。

一方で、かつて「淘宝（タオバオ）」と「京東（JD.com）」で「淘宝客」をしていた人物は、このツールに興味を示す理由を次のように語る。

この類の“偽ライブ”ツールと「淘宝客」がよく用いる他の自動化ツールは、本質的に違いがない。PC（或いはシミュレーター）の空き容量さえあれば、試してみる価値がある。つまり、このツールを使って得られる収益がツールを利用してかかる電気代を下回ることはまずなく、低コストで利用が可能という訳だ。

最後に、「优X直播」ソフトの制作者は『亿邦动力』の取材に対し、このようなソフトウェアの開発は「違反の疑いがある可能性がある」ため、今後徐々に停止する必要がある。また、これまでに関連プラットフォームの法務担当から警告を受けていることをほのめかした。

しかし、『亿邦动力』の「今後も継続的に購入が可能か？」という質問に対し、「优X直播」は「人に魚の釣り方を教えるより、魚を与える方がいい」、また“お試しカード”も購入できる、と回答した。

以上のことから、「优X直播」のような“偽ライブ”アプリはこれからも暫く流通するであろうと思われる。

「优X直播」の本質がライブ配信を装った「淘宝客」サイトであるとすると、「全民抖商」はインタラクティブな性質を備え、ユーザーがコンテンツを制作するツールである。

具体的な運営フローは、先ず「全民抖商」は「淘宝（タオバオ）」や「京東（JD.com）」等の販売プラットフォーム上でハイエンドなブランド店舗と提携する。ブランド店舗は商品を「全民抖商」へ送付し、検証を受ける。「全民抖商」は動画撮影に協力してくれるKLOユーザーを招聘して、商品に関する多くの異なる動画を編集し、店舗の商品コンテンツ制作をサポートする。「全民抖商」プラットフォームの収入の大部分は、ブランド店舗との契約から得られるサポート費用である。
販促動画が完成すると、「全民抖商」はアプリを通じて会員のスマートフォンへ送信する。会員は動画を保存した後、「抖音」、「快手」、「小紅書（RED）」等のソーシャルプラットフォームへ投稿するだけで、動画から得られるコミッションフィーを得ることができる。

「全民抖商」の想定では、この方法により、新方式のマーケティング能力がない店舗でも販促コンテンツを制作でき、数万人もの「全民抖商」会員が全国で拡散することで、新しい販売チャネルの風穴を開けることができる。「全民抖商」のKLO会員は空き時間に商品を受け取って撮影し、販促動画をアップロードするだけで、相当のサービス費用を得ることができる。「全民抖商」の一般会員は動画をダウンロードし、「抖音」に投稿するだけでコミッションを受け取ることができる。品質保証と販売後の対応は全てメーカーが全面管理しており、リスクをコントロールできる仕組みとなっている。

『亿邦动力』の検証によると、「全民抖商」アプリでは、非登録会員でもKOLが撮影した販促動画をダウンロードできることが分かった。ただし、各動画をダウンロードするには1本あたり5元が必要で、698元の年会費を支払えば、毎月30本まで無料ダウンロードができる。現在の規定では、会員は毎月動画1本をプラットフォームへアップすると2元のキャッシュバックを得ることができ、1年間に730元まで返金可能だ。

「全民抖商」の経営パートナーによると、会員が1カ月に30本の動画を投稿すると、そのうち約１～２本がヒット動画となり、月平均最低数百元から、多い場合は10,000元以上のコミッションを得ることができる。もしも会員が自ら動画製作に関わりたい場合、「全民抖商」では専門の研修コースも提供しているという。

「全民抖商」が保障する以下３つの特点に注目したい。

１．「全民抖商」は「抖音」と提携しており、入会したばかりの会員に対しPVサポートを行う。フォロワーがいなくても心配無用。
２． 新会員には「抖音橱窗（ショールーム）」機能を設ける。「抖音橱窗」の開設にはフォロワー数1000が必要だが、「全民抖商」プラットフォームが会員の1000フォロワー獲得をサポートする。会員は1人フォローする毎に0.5元を獲得できる。
３． 新規会員の友人を招待すると、最大200元の奨励金が付与される。

『亿邦动力』の取材では、１.の「抖音との提携」について「抖音」側は否定しており、このような表現は詐欺にあたると認識している。また、3.の友人紹介の奨励金に関する規定は公示されていない。

あるECブランド責任者の見解によると、「全民抖商」を利用する店舗はショート動画やライブ販売の真の価値をまるで分かっていない。未だにPV数を多く獲得すればよいという観点でEコマースを理解しているようだ。

これに対し「全民抖商」は、「全民抖商」がブランドに提供するのは有料会員による自発的な配信であり、それは人為的に創られたPV数に他ならない。ブランド自身はその価値や温度を伝える術を持っていないという。

直播（ライブ販売）時代において、やはり多くのPV数を獲得することが有効なのか？PV数の多さは何を以って定義するのか。
「优X直播」は、全国に“偽ライブ”をコピー配信することで、広いエリアにアプローチすることができる。
「全民抖商」は、会員制度を利用し、多くの「抖音」ユーザーがブランド販促をサポートする。

現在、多くのブランドがPV獲得方法として採用しているのは、“李佳琦”、 “薇娅”、“辛巴们”など一度のライブ配信で数万人の視聴が保証されるスーパーライバーを起用する方法や、多数のKOLやKOCを囲い込むMCN（Multi Chanel Network）の活用で、それらが主流となっている。

「优X直播」や「全民抖商」に代表される販促ツールはニッチな隙間や漏れを探し、独自領域を確立する“黑产（グレー産業）”を呼ばれている。

いずれにしても、PVの未来動向は公的領域と私的領域の共同運営が鍵になるであろうというのが業界関係者の見方である。