2019年4月3日 更新

【記事コラム】中国最大手ドラッグストアチェーン「Watson’s(屈臣氏) 」を巡り、アリババとテンセントが争奪戦?

大手ドラッグストアチェーン「Watson’s(屈臣氏) 」の株式取得先に「アリババ」と「テンセント」の名前が浮上しています。オフラインの実店舗に強みを持つ「Watson's」に、オンラインプラットホームの2強が関心を示すのはなぜでしょうか。小売業界に注目する両社の戦略と合わせてご紹介します。

屈臣氏值得阿里和腾讯重金争抢吗?
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中国初のドラッグストアチェーン「Watson’s」、店舗拡大による急成長と現在の低迷

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「Watson’s(屈臣氏) 」はコスメ及びスキンケア用品等を専門に取り扱う中国初のドラッグストアチェーンで、1989年に北京で1号店を出店してからすでに30年の歴史がある。現在、中国438都市に3,200店以上を出店しており、6,400万人以上の顧客会員がいる。主な事業領域は「ヘルスケア及び美容」、「香水及び化粧品」、「食品・電子機器・洋酒」、「食品製造」の4つの分野に渡る。

ECサイトの台頭によりここ数年売り上げが低迷している「Watson's」について、今年3月20日、Watson’sグループの24.95%の株式を保有するシンガポール政府系投資会社「テマセク(Temasek)」が、同社株式の10%を30億米ドルで売却する計画であると報じられた。

業界関係者によると、「テンセント」が投資機関を通じてWatson's株入手に動いており、また「アリババ」も同社株取得に関心を示し、3月に開催される経営陣向け説明会に参加する予定だと言う。

「アリババイ」、「テンセント」、「テマセク」の代表者はいずれもこの件に関して公式なコメントは控えているが、オンラインプラットフォームの大手2社がドラッグストアチェーンの経営関与に関心を示す理由はどこにあるのだろうか?
「Watson's」の軌跡

「Watson's」の軌跡

「Watson’s」公式サイトによると、2018年のグループ全体の店舗数は15,000店で、香港・マカオ・台湾を含む中国圏、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、トルコ、ウクライナ等、25の海外市場へ進出している。グループ全体の顧客会員数は1億3,000万人を超え、従業員数は13万人以上に上る。

2010年以降は、ターゲットを中国大陸に定めて出店を加速し、2009年の約600店から、2018年には3,600店まで店舗数を増やした。毎年200店舗以上を新規に出店し、業績は年間平均23.4%増の右肩上がりで、2011年には40%に迫る増加率を記録している。

しかし、2015年以降業績に陰りが見え始める。2016年には中国市場の営業利益が初めて前年比-4%、売上高は-10%に転じる。2017年の売上額はさらに-4.3%の減少となり、販売チャネルが多様化する中でオフライン店舗の強みにこだわり、オンラインへの取り組みが遅れた「Watson's」は市場競争力を失っていく。

「Watson's」が生んだ問題、中国市場低迷にも拘らず利益率増加の歪んだ収益構造

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現在、消費者が化粧品やヘルスケア商品を購入するチャネルは多様化しており、オンラインでは「天猫国際(Tmall)」、「京東(JD)」、「蘇寧(Suning」、「小紅書(RED)」、オフラインでは「セフォラ」、「万寧(Wanning)」、「GIALEN(娇兰佳人)」等、様々なサイトやブランドが出現している。

「Watson's」にはサービス面での課題もあり、ある消費者調査によると「Watson's」で買い物をしたくない理由として次の項目が挙げられた。

1. 販売員の勧誘がしつこく、買い物中ずっと客に付きまとって、特定ブランドの商品を執拗に勧める。
2. ブランドのラインナップが煩雑で要らない物がたくさんある。
3. 価格が他のショップと比べて高い。
4. 支払い時にレジで行われるセールトークが不快だ。

これらサービス面の課題は、中国小売業界特有のシステムとも関係している。

長い間中国の小売業界ではコミッションを支払い、メーカーやブランドは売り場を借りて商品を販売するのが主流であったため、伝統的な小売店舗の多くは商品の販売利益に基づく経営ではなく、出店ブランドからの家賃収入や販促費など様々な名目によるキックバックで利益を確保してきた。

「Watson's」は海外ブランドの唯一の代理販売店であるため、高額な販売委託費を徴収し、中国国内の売上が停滞しているにも関わらず、利益率は減少しないという“奇妙”な状況となっている。

業界関係者の吴志剛氏は、「『Watson’s』の店舗運営モデルは手数料などの管理収入に頼り過ぎており、需給バランスが極端に歪んでいる。このようなコミッションや管理費はブランドやメーカーが承服できないレベルにまで達している」と指摘する。またWebメディア『快刀財経』は、「Watson’s」の提携ブランドで利益を確保できているところはほとんどなく、ブランドが「Watson’s」向け商品を開発する場合は原価率を小売価格の8%以内にしないと採算が合わないと伝えている。

現在、「Watson's」は新規店舗数を増やすことで売上を伸ばしているが、既存店の財務状況は悪化している。都市部への出店はすでに完了しており、地方部の3・4級都市への進出で売上拡大を図ろうとしているが、これは都市部客からの人気が失われつつあると言い換えることができる。

ブランドの陳腐化と影響力の低下、時代に乗り遅れたマーケティング手法やサービス理念、盲目的な店舗拡大によって経営のバランスを失った「Watson's」は課題山積だ。

復活をかけた「Watson’s」の転換

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2017年、高宏達(Christian Nothhaft)氏が新CEOに就任すると、「Watson’s」はこれまでとは違いオンライン対応にも積極的な姿勢を示すようになる。2018年8月、同氏はイベントの中で「Watson's」の中国戦略を発表し次のように語っている。

1. 店舗イメージの改善
これまでの出店ペースを緩め、市場や消費者のニーズ変化に対応した店舗づくりに切り替える。全国統一の店舗設計を地域によって調整し、若者の注目を集めるための第8世代店舗を“Generation Young”と位置づけ、専用の肌状態の測定器などを設置したり、KOL(インターネット上のインフルエンサー)が紹介して人気となった海外コスメや香水のコーナーを設けるなど、消費者の“体験”を重視した新たな施策を開始。

同時に新型店舗では、BA(特定ブランドの販売員)の入店を厳しく制限し、かねてから消費者の不満が大きかった“つきまとい販売”を規制している。

2. ブランドの高級路線化を加速
輸入商品の売上比率を30%まで引き上げ、高級化戦略を推進。

3. “オンライン”と“オフライン”のバランス
2017年にお買い物アプリ「莴笋」をリリース。オンライン店舗とオフラインの実店舗のバランスを取り、“O2O(Webサイトから実店舗への誘導)”モデルの相乗効果を図る。「天猫(Tmall)」に設けた旗艦店では、2018年W11(ダブルイレブン)で「Watson's」はトップレベルの売上をキープしている。

4. ソーシャルメディアの積極活用
「微信(Wechat)」のWatson’sアカウントには2800万を超えるフォロワーがいる。「Watson's」はメディアプラットフォームを立ち上げてこれらの資源を利用し、KOLたちと密接な関係を築いていく。

新CEOのリーダーシップの下、Watson'sは少しずつ若返りを果たしているが、近年消費者がコスメ商品を購入するルートは多様化しており、更なる変革と変化への対応が求められている。

「Watson’s」の自主再建はあるか?救世主は「アリババ」or「テンセント」?

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「アリババ」はオフラインでの小売戦略として、ショッピングモール、百貨店、量販店、複合型スーパー等の実態店舗への投資を行っており、直販による潜在顧客の掘り起こしで芽が出始めている。農村市場に照準を合わせた「五星控股集団」との提携では、45億元を投じてサプライチェーン、販売・マーケティングチャネル、物流、システムの技術開発などで協業し、農村部の消費者に対する一連のサービスを提供している。

オンラインの小売戦略では、2018年6月に「小紅書(RED)」に投資を行ったほか、ベビー用品や酒類などの業界へも戦略的な投資や提携を行っている。

一方「テンセント」の小売戦略は、細分化された領域に対して意図的な投資を行い、“to B”業務を強化している。自社が運営する「微信小程序(ミニプログラム)」の販売プラットフォームへ小売販売店の登録を促し、ソーシャルコマースの「拼多多(Pinduoduo)」や、コスメを中心としたライフスタイルプラットフォーム「小紅書(RED)」などにも投資している。

「Watson's」自身も“オンライン化”への取り組みとして外部企業との様々な提携モデルを模索しており、スマート家電大手の「小米」や出前サービス「餓了么」と協力して、オンラインでの商品販売や配達サービスを提供。「永輝」と「テンセント」と共に大型小売店「百佳永輝(parknshop)」の経営に乗り出したり、ODMメーカー「網易厳選(Yanxuan)」とのコラボレーションで“Watson+”のPB商品をオフライン店舗で販売している。

急成長を続けるコスメ業界に強みを持つ「Watson's」に、「アリババ」と「テンセント」は価値を見いだし、業績回復の救世主となるのか?或いは「Watson’s」が自力でV字回復を実現できるのか?業界ビッグの今後の身の振り方に注目が集まる。

-----------元記事の紹介はここまで--------------


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